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モノから人が見えてくる大学教員モノ語り

日本語の文法に隠された謎に迫る

1964年静岡県生まれ。東京大学文学部(言語学)卒業後、東京外国語大学大学院外国語学研究科修士課程(日本語学)修了、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程(日本学専攻:現代日本語学)修了。博士(文学)。東京大学留学生センターを経て、02年4月に学習院大学助教授、08年4月より教授に。日本語の文法、特に複文を研究。アジアで日本語を学ぶ人々をサポートするプロジェクトに力を入れている。

Q. 先生にとって大切なモノとは?

Webサイト「ニホンゴで働こう!」

ビジネスの場で使える日本語とは?を探究

2012年に「日本語研究者/教育者支援アジア・ネットワーク形成の試み」というプロジェクトを立ち上げ、海外の日本語研究者をお呼びしたり、私たちが海外へ行って日本語を学ぶ学生と交流したりしています。そんな活動をしていく中で、ある先生が「ビジネス日本語って難しいんですよね」と発したことをきっかけに、共同で研究をしようということになりました。ビジネス日本語の教科書を集めて分析したり、他の国ではどんな授業をしているのか調べたり。その一環で、2013年にWebサイトを立ち上げたんです。日本で働く外国人の方がどんなことに困っているかを4コママンガにしたものや、教材にも使えるような留学体験談のコンテンツもあります。このサイトが広く活用されるといいなと思っています。

海外の研究会などで発表するため、サイトについてまとめたポスター。ビジネス日本語に関するあらゆる情報が詰まっている。サイトはこちら。ニホンゴで働こう!

『日本語のシンタクスと意味』寺村秀夫

自分のゆく道を照らしてくれた一冊

中学生の頃から言葉にすごく興味があって、「将来、日本語の勉強をしたい」と思っていたんです。なかでも外国人に日本語を教える仕事がいいなと。でも、当時は日本語教育が学問として今ほど確立していなかった。大学に入ったはいいものの、3年の前期までは自分がやりたい分野の授業が全くなくて、「私がやりたいことって大学では勉強できないのかな?」と困っていたときに、寺村先生の授業があったんです。そのテキストがこの『日本語のシンタクスと意味』だった。これだ! と思いました。大学の授業も、真面目に出ていればいいことがあるものですね(笑)。この本は、現代の日本語を研究している人なら直接的にも間接的にも必ず影響を受けている名著だと思います。

「わざわざ言及するのは恥ずかしいほどの名著」と前田先生が語る一冊。同じく寺村先生が関わった「日本語の文法」(国立国語研究所編)も、Amazonで見つけるたびに買い足すほどの本だそう。

『現代日本語文法』(全7巻)日本語記述文法研究会

世界中にこの本を広めるのが私の役目

これ、私たちのグループで作った現代日本語の文法書なんです。私が主に関わったのは6巻の「複文」ですね。これを世界中の国に配るのが私の使命です。研究会などで海外の大学に行くたびにスーツケースに7巻セットを詰め込んで出かけます。他の先生が海外に行くときに託すこともあります(笑)。日本の本って高くてなかなか買えないから、とても喜ばれるんです。いま日本語の、現代語の文法ではこれが最も網羅的なものだと思います。最も優れているかは置いておいて、まずはここを出発点にして、何か問題があればそれを研究していってもらいたい。この本が世界中の研究者の足掛かりになればな、と思っているんです。

各巻300ページ越えが全7巻の大ボリューム。にもかかわらず前田先生の研究室にはいつ誰にでも託せるように、10セット近くがストックされていました。

Q. 先生のキャンパスライフは?

学内でも有名な朝型

若い頃からずっと朝型という前田先生。「私の先生も朝型でしたし、みんなこんなもんだと思ってました」というその起床時刻はなんと4時!

04:00 起床
洗濯など、家事を一通りこなす。
07:00 大学到着
ここから1限開始までの2時間が1日で最も集中できる時間。
09:00 授業開始
1限の授業が多い。
11:30 昼食
1限を終えて、研究室で一息ついて昼食。「少し早弁ですね」
12:30 仕事再開
研究やプロジェクト関連の仕事など、やることはいっぱい。
20:00 帰宅
22:00 就寝
海外から日本語教育者を招いて、学習院大学で行った研究発表。
中国・北京での合同研究会。海外の日本語教育の質の向上を図っている。

Q. 1問1答で教えてください。

お休みの日は何をしていますか?

普段の休日は自分の勉強、研究。長期の夏休みはここ数年、1週間程度英語学校のサマーコースに入ります。教える側でなく学ぶ立場に立つことで学生の気持ちを感じられる。「宿題イヤだな」とか(笑)。いろいろな先生の教え方を観察できるのもいいですね。

職業病はありますか?

日本語の文法が専門というと、「間違いを指摘されるのでは?」とおそれる人が多いのですが、私の仕事は間違いを直すことではなく、間違いがなぜ起こったのかを探ることにあります。場合によってはその間違いが次の時代の日本語になるかもしれないので、面白い間違いはどんどんしてほしい。

今の研究分野に関することで、私生活で役に立つことは?

人間は言葉を使わずには生きていけません。ですから、学生時代に、言葉についてしっかり学ぶことは、一生、役に立つと思います。また、日本語教育の面からは、言葉が十分通じ合えない人とどうコミュニケーションをとるべきか、文化の違う人とどうしたら理解しあえるかを考えることで、新たな自分を発見することもできると思います。

これからの夢、展望は?

私の周りには外国人の日本語研究者・日本語教育者がたくさんいて、皆さん日本人よりも(私よりも)日本語のことをよく理解しています。その一方で、ネイティブである日本人の力がどうしても必要な時がたくさんあります。そういう時に適切な支援をすることが、今後も続けるべき大切な仕事だと思っています。

編集後記

釣木 文恵 PROFILE

(つるき・ふみえ)
学習院大学文学部日本語日本文学科卒ライター。
雑誌「クイック・ジャパン」「ピクトアップ」などで執筆のほか、WEBマガジンでのインタビューなど。
大学時代は学部の談話室に入り浸っていました。

世界中を飛び回る日本語の伝道師

「日本語日本文学科はとても国際的な学科なんですよ」。それは毎年3、4回は海外に出向き、日本語教育者・研究者と交流する先生だからこそ言える実感のこもった言葉です。世界中に点在する、日本語に携わる人の力になりたいという思いと行動力に感銘を受けました。

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