HOME  > 「学ぶ」  > 教員インタビューINDEX >  理学部数学科 川﨑 徹郎 教授

モノから人が見えてくる大学教員モノ語り

「オイラーの定理」で有名な位相幾何学に挑む

1948年、東京都生まれ。71年東京大学理学部を卒業し大学院に。74年ジョンズホプキンス大学大学院へ留学し、76年同大学数学研究科修了。76年大阪大学理学部で助手として勤める。その後79年学習院大学理学部講師、82年に助教授、03年に教授に。著書に『曲面と多面体』(01)。高校の教科書編集にも長年携わる。

Q. 先生にとって大切なモノとは?

手作りの模型

模型をつくる過程に発見がつまっている

数学は基本的に、定理を証明することが目的ですから、紙と鉛筆さえあればできる学問です。モノとして目の前に現れるものではない。しかし、図形の構造を理解するために模型をつくってみると、曲面はどのようにつながりあっているのか、きれいな形はどのように組み上がっているんだろうということが非常にわかりやすい。幾何学の面白さを理解するのに役立ちます。模型をつくって初めて理解できることもあります。2014年には3Dプリンタでの模型づくりも始めて、いまは模索しながらやっています。自動で模型ができるのは一見簡単に思えるかもしれませんが、模型ができるまでにたくさんの計算と設計が必要ですし、そこが重要なんです。

正十二面体の図形は学生たちがつくったもの。20年以上経っているが、いまだにしっかりしている。これらの図形は川﨑先生の研究室の棚に並べられています。

M.C.エッシャーの本

常に学生が楽しく学べるアプローチを

年によってゼミの研究課題は変わりますが、たとえば2011年にはだまし絵で有名なエッシャーの絵を題材にしました。エッシャーの作品には規則的文様が描かれたものがたくさんあります。数学では結晶構造といって、平面上に規則的な模様を並べる方法は17種類あります。学生たちはエッシャーの模様を解析して、「こことここが同じ形」「この曲線が組合わせられる」と、それぞれがどの結晶群に属するのか、それを調べるというものです。模型づくりも同じですが、学生が興味を持つのが大事なんですね。アラベスクというアラビアのイスラム模様を使ったこともあります。写真を観て、しくみを理解し、模様を自分でつくってみるところまで。みんな夢中になってやってくれました。

川﨑先生の研究室に所蔵されているエッシャーの画集(左と中央)。研究室にはエッシャーのポスターも飾られている。研究の成果は一冊にまとめられた(右)。

単眼鏡

学内でもたくさんの鳥に出会える

野鳥の観察が趣味なんです。学習院大学の敷地内にはしっかりした森がありますから、ぶらぶらと歩いているだけでもたくさんの鳥が見られますよ。明治神宮の森が近いこともあるのかな、20~30種類は見られると思います。だいたい見ればわかります。シジュウカラ、オケラ、カワセミやサギ類、カモ類も見たことがありますね。先日は血洗いの池で、初めてゴイサギの幼鳥を見ました。ここが目白だからというわけではないですが、何よりメジロがたくさんいますね。4月から6月くらいまではきれいな声がよく聞こえます。研究室のある建物は森に近いですから、研究室の窓を開けるだけで声が聞こえることもあります。

川﨑先生のウエストポーチの中に入っているコンパクトな単眼鏡。学内を歩いているときなどに鳥の声が聞こえると、さっと取り出して鳥を見ることもあるのだとか。

Q. 先生のキャンパスライフは?

深夜の読書の時間が1日の楽しみ

「とくに決まったスケジュールはありません」という川﨑先生。研究等に合わせて毎日を過ごすそうですが、夜の勉強時間はすごい!

07:30 起床
1限があるときはこの時間。「1限がない時はもっと遅くまで寝ていることもあります」
08:30 大学到着
09:00 授業開始
12:00 昼食
昼食も研究や授業の進捗に合わせて、日によってまちまち。
19:00 帰宅・夕食
授業準備や調べものなど。ちなみに勉強部屋には模型がない代わり本で埋め尽くされているとか。
25:00 読書・お酒
研究とは関係ない本を読む。「推理小説なんかも好きです」
27:00 就寝
工芸作品のような白い図形はジャイロ曲面という複雑な曲面。細いがしっかりとしている。

Q. 1問1答で教えてください。

いま熱中していることは何ですか?

家族全員で、山梨県小淵沢の近くにある野鳥村というところのメンバーです。30年前から通っていますが、数年前にそこに別荘を建て、忙しい時でも月に1~2回は行くようにしています。かつて草原だったそのあたりは、今は大きな木が茂り、リスやタヌキ、イノシシを見ることもあります。そこで四季の変化を楽しみ、野鳥の観察をするのが楽しみです。

お休みの日は何をしていますか?

現在はやっていませんが、遠泳が趣味でした。茨城県の霞ケ浦で年一回横断遠泳をするイベントを25回開催しました。他にもそのメンバーの有志で、湖でリレー式の遠泳をしたりも。年1回、20回近く全国の湖を泳ぎました。

授業でのハプニングはありますか?

3Dプリンタで模型をつくるのはまだまだ模索中なのですが、ちょっと大きめの模型を作ろうとするとかなり時間がかかります。ある時セッティングをしてしばらくたってから確認しに行ったら、途中からうまくいかなくなっていたようで、糸状の素材が山盛りにあふれていました。

これからの夢、展望は?

ジャイロ曲面は、前後上下左右に周期的に空間を埋め尽くす性質があります。極小曲面という性質から、紙で作った模型はしっかりした構造になります。この構造の丈夫さを数学的に明らかにすることは難しいのですが、模型をつくるとよくわかります。この構造を、少ない材料で大きなしっかりした構造物をつくることに利用できたらという夢を持っています。

編集後記

釣木 文恵 PROFILE

(つるき・ふみえ)
学習院大学文学部日本語日本文学科卒ライター。
雑誌「クイック・ジャパン」「ピクトアップ」などで執筆のほか、WEBマガジンでのインタビューなど。
大学時代は学部の談話室に入り浸っていました。

「数学を楽しむ」術を教えてくれる先生

先生自身や、学生がつくった模型で埋め尽くされていた川﨑先生の研究室。ずいぶん古い模型まで大事にとってあります。様々な方法で幾何学にアプローチする先生ですが、お話の端々から「学生たちに楽しんで幾何学に取り組んでほしい」という思いが伝わってきました。

学部関連コンテンツ

  • 学部についてもっと詳しく知るなら学習院大学 学部サイトへ!