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モノから人が見えてくる大学教員モノ語り

ゲーム理論でいまの経済を読み解く

1958年、神奈川県生まれ。82年、東京工業大学理学部卒業、87年同大学院理工学研究科博士課程単位取得。同年、東京都立大学経済学部助手、89年駒沢大学経営学部講師を務めたのち、93年学習院大学経済学部助教授に。95年より教授。

Q. 先生にとって大切なモノとは?

論文の抜き刷り

初めての論文を通じて学習院と出会った

これは、学術誌に載った私の初めての論文です。ルロイド・シャープリーとスカーフという人が書いた論文で考察されている交換経済における均衡の性質をもう少し詳しく追求したものです。ところがそのシャープリーとスカーフの論文が手に入りませんでした。必死に調べたところ、学習院大学の図書館にあることがわかりました。普通、学外の人は貸してもらえないのですが、司書の方に「どうしてもこれを閲覧してコピーもしたい」と伝えると、カウンターの奥にいたヒゲのおじさんが、僕の顔を遠くからじっと見て「……いいんじゃない?」と言ってくださったのです。後で分かったのですが、当時図書館で勤務され、数年前に退職された職員の方でした。学習院大学のおかげで私は論文を書くことができたのです。

和光先生いわく「学習院に勤めることになるなんて思いもしなかった当時の話です」。ちなみにこの時借りた論文の執筆者の一人であるシャープリーは2012年にノーベル経済学賞を受賞。

ゼミ論文集

学生たちが「面白さ」を見つけた証

私が指導しているゼミでは4年生の後期に、グループごとに自由なテーマでレポートを書くよう指導しています。経済学部は卒業論文が必須ではないから、面倒くさがる学生たちも少なくないです。でも、最初はあまり乗り気でなくても、テーマを探すうちに、意外と興味をもつものが発見できて、最後は、面白がって取り組む学生たちが毎年出てきます。僕も驚くような立派なレポートを書いてくるグループがありますよ。できあがったものは毎年人数分製本して、プレゼントします。楽しんで取り組んだ学生たちは、喜んで取りに来ますね。

上の段は修士論文及び博士論文。修士論文は素晴らしい出来だったため、和光先生がハードカバー製本を施し、一冊は本人に渡し、一冊は手元に残したという。

学内レガッタ大会の表彰状

伝統のレガッタ大会は交流の場

学習院大学では長年、学内レガッタ大会を開催しています。4人一組で漕ぐボートですね。正式な大会では2000mで試合をしますが、学内レガッタのコースは300mです。これくらいの距離であれば、まったくの初心者でもなんとか漕ぎきれます。皆の漕ぐタイミングが合うとぐんと進むから、なかなか面白いです。この賞状は、和光ゼミが2004年に獲得したものですが、当時のゼミ生たちは、もちろん全員初心者でした。私が今いる研究室を以前使っていらした故・島野卓爾先生がボート部の顧問をなさっていて、そのご縁で、ボート経験のない私がボート部の顧問になりました。53年も続いている学内レガッタですから顧問の私は、毎年観戦して、みんなの応援をしています。

この年は「和光ゼミ1号」から「和光ゼミ3号」まで初心者ばかり3グループで参加。見事「和光ゼミ1号」が準優勝!
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Q. 先生のキャンパスライフは?

家族での夕食は貴重な〈会話〉の時間

「子供たちの友人が遊びに来て一緒に食事をすると、難しい話をしていると言われるときがあります。そんなつもりは全然ないんですけどねえ」と首をひねる。

06:00 起床
08:30 学校到着
授業のあるなしに関わらずこの時間には学校に。
09:00 授業開始
12:00 昼食
お昼は日によって適当に。
13:00 仕事
隔週で修士論文の相談にのる時間を設けている。「問題点について一緒に考えたり、『大丈夫だよ』と勇気づけることが重要」
20:00 帰宅
21:00 夕食
家族と一緒に食事をとるのが基本。食卓ではよく話す。
24:00 就寝
昔に比べればとても早くなりました。
ボート部の学生たちは1日10km程度漕ぐなか、僕は「生まれてから2kmしか漕いだことがない」と笑わせる和光先生。「昨年のレガッタ大会で久しぶりに漕いでみたら全然ダメでした(笑)」

Q. 1問1答で教えてください。

休日はどんなふうにすごしていますか?

「こういう性質はちゃんと証明できるかもしれない」ということを絞り込んで、その証明をずっと考えていられるのがいちばんハッピーな休日です。大学の先生はみんなそうだと思いますが、そんな時は疲れません。でもそういう瞬間はなかなか訪れないです。

授業中の失敗談を教えてください。

授業中によく計算をして見せるのですが、誰にでもわかる大間違いをしてしまうことがありますね。そういう時に限って自信を持って授業を進めていて、なかなか自分では気づきません。学生たちがザワザワしているから「何があった?」と聞くと、間違いを指摘してくれて、「失礼いたしました」とか言って訂正します(笑)。

研究分野に関することで、実生活に役立つことは?

ゲーム理論は、「必ず当たる」とか、「これでいつでも勝てる」というような理論ではないです。しかし、ゲーム理論を状況把握に使うと、実生活でとても役に立つと思います。

今後の夢・展望はどんなものですか?

医学部を卒業して国家試験に受かった人たちは、研修医となります。その研修先の病院を決める「研修医マッチング」という制度には、実際にゲーム理論が使われています。このシステムが本当にうまく機能しているかどうかを調べています。現状は一見スムーズに見えるだけに調査は難しいのですが、本当に医学生が希望通りの配属ができているか、日本の医療により役立つようにするにはどのように改善すればよいのかなどを細かく調べたいというのが今の夢です。

編集後記

釣木 文恵 PROFILE

(つるき・ふみえ)
学習院大学文学部日本語日本文学科卒ライター。
雑誌「クイック・ジャパン」「ピクトアップ」などで執筆のほか、WEBマガジンでのインタビューなど。
大学時代は学部の談話室に入り浸っていました。

興味の芽をやさしく見守る〈観察者〉

ゼミ論について、「学生が面白いと思ったことは、なるべくほめて『それでやってごらん』と薦める」という和光先生。大きく間違っていない限り学生の興味を最大限尊重するその姿勢は、「やりたいことがわからない」人たちの大きな力になるのではないでしょうか。

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