HOME > おもしろい授業をしています INDEX > Close-up Seminar/日本語日本文学科

Close-up Seminar

日本語日本文学科

写真

日本文学演習

昔話の老夫婦が村外れに住んでいる、その理由とは?

弱者の嘘が許される
残酷でやさしい社会

 昔話に出てくる夫婦は、なぜ子どものいない年寄りばかりで村外れに住んでいるのでしょう? 昔話に出てくる子どものいない老夫婦は、実は村社会において経済的に大変厳しい状況に追い込まれ、村外れにしか住めない弱者なのです。

 中世の狂言でも、弱者はひどくいじめられます。誰も同情せずに残酷に見えますが、一方で弱い者も嘘をつく。弱者が嘘をついて立ち回り、生き延びることが許される社会なんです。「昔々あるところに……」、そこから始まる世界には、社会の謎が詰まっていて、秘密だらけの底なし沼にハマります。

 本演習では、日本の昔話を題材に日本文化論を学びます。昔話には、日本文学につながる民俗の背景が横たわり、私達に「日本文化とは何か?」という問いかけをしてくれるからです。『笠地蔵』では「なぜ村外れにお地蔵があるのか」など、次々と生まれる疑問を手探りで一つひとつ調べて答えを見つけていきます。

社会の「あたりまえ」を
立ち止まって考えるきっかけに

 演習では1年間を通じて、昔話が掲載された文庫本を題材に、個人発表を行います。子どもの頃に、耳を通して聞いてきた話を文字となったテクストで読み解いてもらうのです。学生がコメンテーターとなって意見や質問を投げかけた後、私からもテーマの広げ方などコメントします。時には宮崎駿作品との共通点を示唆することも。昔話と現代のアニメやマンガをつなげることで、学生に日本文化を身近に感じてもらい、研究としての広がりをもってもらうことも目的です

 日本文学、日本文化を学ぶことで世界を見るまなざしは確実に柔らく豊かなものになります。社会において力のないマージナルな存在、何か欠けている存在が主人公となる昔話。そこから今、私達が生きている社会を見ることができるからです。演習は、私達がふだんあたりまえに思っていることを立ち止まって考え、解きほぐす訓練にもなるのです。

赤坂憲雄 教授

東京大学文学部卒業。東北芸術工科大学教授、同大学に東北文化研究センターを設立。2011年現職。福島県立博物館館長、遠野文化研究センター所長。専門:民俗学・日本文化論。

肖像