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Close-up Seminar

物理学科

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理論研究室

好奇心の種から科学の芽を

基礎科学から応用へ:
フラストレーションと超伝導

 私が専門としているのは「物性物理」という分野です。電子がひとつの決まった状態に落ち着きにくいことを表す「フラストレーション」という性質を備えた物質、特にその代表例として、氷の原子構造をそっくり模倣した「スピンアイス」という磁性体の研究を行っています。最近はフラストレーションをもつ磁性体を金属に転化すると、高い温度で「超伝導」を起こすかもしれない、と考えて研究を進めています。

 超伝導とは、物質を冷却すると、ある温度から急激に電気抵抗がゼロになる現象です。電気抵抗をもつ物質に電流を流すと電流のエネルギーの一部は熱に変わって失われますが、超伝導体ではそのエネルギーロスを防げるわけです。この仕組みはすでにリニアモーターカーなどに使われていますが、物質を冷やさずに室温で超伝導が起こるならば、今よりもはるかに多くの応用の道が拓け、超伝導は社会の基幹的な技術へと大きく進化するでしょう。「フラストレーション」自体はもともと純粋な好奇心から生じた基礎科学的な概念ですが、その好奇心の産物が社会に革命的な応用をもたらすことになるのかもしれません。

異なる知識の結びつき:
物理概念と日常風景

 とはいうものの、物理という学問は、好奇心を抱くには少し難解すぎる、という印象をもつ人は多いと思います。授業では、身近な例を持ち出して理解の助けとするように心がけています。例えば「共鳴」という現象を大学では勉強しますが、そのときに私がよく持ち出す例え話はトイレ掃除です。毎週トイレ掃除をしていると、リズミカルにブラシでトイレをこするのは、水がはねあがって顔にかかり、危険だということに気づきます。これはトイレの水の振動とブラシの動きの周波数が一致してしまったために起こる悲劇の共鳴現象です。フーリエ変換したときに、真っ平らなグラフになるように不規則にブラシを動かすのが理想だね、と授業では話します。

 難解な物理概念も自分のもつ別の知識や、日常の光景と結びつくとなれば、自ずと好奇心もわき上がってくるのではないでしょうか?私自身もまた、そのような好奇心を大事にし、研究にいそしんで参りたいと思います。

宇田川将文 准教授

東京大学理学部物理学科卒業。東京大学大学院助手、理学博士号取得、東京大学大学院助教、Max Planck研究所客員研究員を経て、2015年より現職。専門:物性理論。

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