1968年東京都生まれ。幼少期をブラジルで過ごす。1996年早稲田大学理工学研究科博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、科学技術振興機構CREST研究員、情報通信研究機構研究員を経て、2003年学習院大学理学部助教授に。科学技術振興機構さきがけ研究員兼任。2008年から現職。動く機能をもつたんぱく質、回転分子モーターの仕組みを解明すべく、独自の顕微鏡を用いて研究を進めている。研究室はつねに学生以外の研究員も3〜5名在籍する、研究所スタイルでたんぱく質の謎に挑む。
人間をはじめとする生き物を形成する物質、それがたんぱく質。私はその仕組みを解明するための研究を続けています。たんぱく質の分子は、10万分の1ミリという小ささ。市販の顕微鏡では、そこまで小さいものの動きを観察することは到底できません。そこで、これらの顕微鏡を徹底的に改造。世界に一台しかない、最高スペックの顕微鏡をつくりあげているんです。動く機能を持つ「回転分子モーター」と言われるたんぱく質の化学反応を直接見ることのできる顕微鏡は、世界中で日本にしかない。そして、日本にあるものは全部私の発明がもとになっています。これからも自作の光学顕微鏡を武器に、生物物理学の最先端の研究を進めていきます!
特許を出願する人はたくさんいますが、実際に取得までいくのは稀なこと。そんな中で、私の研究室では光学顕微鏡に関する特許を今までに5つ取得しています。それぞれの特許について、世界各国での取得も進めているところです。中でも、平面だけでなく奥行の情報を把握することができる顕微鏡についての特許は、学生と一緒に取得しました。だから、これを読んでいる受験生も、僕の研究室に来たら特許が取れる可能性は十分にあります(笑)。特許は、独自の研究をしているという重要な証です。ただ、特許がほしいから研究をしているわけじゃない。知りたいことがまず先にある。それを見る方法が存在しないから、そのための装置をつくる。特許はその結果としてあるものです。
顔を上げると魚が泳いでいる、それが夢だったんです。子どものころから生き物の中でも特に魚をはじめとする水棲動物が好きだった。とくに理由はないんですが、強いて言うならば、水棲動物は生きている空間をそのまま切り取ってこられるから、かな? 現地と同じ水質をうまく作り出せれば、アマゾンにしかいない魚や、北アメリカにしか生えない水草。そういうものが再現できる。それが面白いんです。水草も魚も元気な水槽がうまくできたら人に見せたくなってしまうんですが、いつもウンチクが長くてあきれられています。研究室には3つの水槽がありますが、本当はこの100倍の魚を飼いたいくらい。自宅は妻とのせめぎあいで、なんとか2つの水槽を死守しています(笑)。
世界でも最先端の研究を行っている西坂教授。
その一方で二人の子どもの良きパパでもあるようです。
「自分の研究室だから、誰よりも早く来たい」。でも熱心な学生に先を越されることも。
水槽の手入れは始めると止まらないので土日に集中!
学校帰りの子どもたちが研究室に寄ることも。(右は研究室に貼ってあった、お子さんから先生に当てて書かれた絵とメッセージ)
「朝夕は子どもと一緒に食事をしたいから」。忙しいときは食後に大学に戻る。
理想の就寝時間。だいたい講義の準備などでもう少し遅くなる。
世界最先端の研究内容を、笑顔を絶やさずやさしく噛み砕いて説明してくださった西坂先生。研究室に置かれたペンギンのオブジェに「先生のいいところ」を学生たちが付箋に書いたものが貼られていた(右上の写真)ことからも、周りから慕われているさまが見えました。