ゼミナールH
児童文学『青い鳥』はアバンギャルドな作品だった!?
知っているはずの物語を
新たに検証してみる
このゼミではフランス語圏の演劇を学びます。身体表現を扱うという点が文学部の中では特徴的で、現在はメーテルランク(英語ではメーテルリンク)の戯曲『ペリアスとメリザンド』を取り上げていますが、彼の作品では『青い鳥』が有名でしょう。「大切なものは身近にある」という物語ですが、じっくり読み解くと、生まれる順番を待つ赤ちゃん達の場面などに深い「死生観」が表現され、単なる児童文学ではないことがわかります。
食べ物が「○○の精」として出てくるのもカトリック的な宗教観と異なり、アニミズムを感じさせます。物語が作られた時代を考えるとかなりアバンギャルド。決して道徳的な物語ではないことがわかり、理解していたつもりのものが思い込みや偏見であったと気づきます。
研究とは直感で感じたことを理論づける作業です。メーテルランクの作品に触れながら、「知っているつもりのものを新たに検証してみる」というきっかけにしてほしいと思います。
異なる文化と共生する
フランス卒業論文のテーマも広範囲に
前期には、『ペリアスとメリザンド』の原作を読み、手に入る限りのDVDで舞台作品を鑑賞して意見交換を行います。学生がこれまで観てきた演劇作品や彼らのバックボーンとなる体験はそれぞれ異なります。また、作品によって演出も異なるので意見も多彩ですが、そんな多様性の発見が前期の目標です。
夏休みには、メーテルランクに関するレポートを書いてもらいます。後期はこのレポートに基づく発表です。質問や感想などできるだけ多くの意見を促すことで、自分の感じたことを人に伝える積極性を身につけてもらいます。
フランス語圏は広範で、ヨーロッパ以外にも、植民地だったベトナムやカンボジアなどアジアを舞台にした書物も出版されています。異なる文化と共生していく文化があるので、幅広い選択肢から卒業論文のテーマを選べます。
大野麻奈子 准教授
学習院大学大学院人文科学研究科博士課程中退。パリ第8大学にて博士号取得。2006年より現職。専門:20世紀フランス文学・演劇。特にサミュエル・ベケットを研究。
