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モノから人が見えてくる大学教員モノ語り

多層的な視点を大事にするドイツ文学者

1976年山口県生まれ。05年京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了後、国立国会図書館勤務、08年京都大学博士(文学)の学位を取得、15年より現職。専門はトーマス・マンの文学、ドイツの図書館制度。最近はドイツ文学における他者像について研究している。

Q. 先生にとって大切なモノとは?

『トーマス・マン全集』新潮社

学生時代、母と歩き回って見つけた全集

通販サイトがまだなかった時代、横浜に移った実家へ帰ったとき、神保町を母に案内されながら歩き回って探しました。何店舗かにあって、最安値の8万円で購入。高いものだと12万くらいしていましたね。今ならネット上の書店などでもっと安く買えるんでしょうけど、当時は手に入れるのがすごく大変で、学生には高い買いものでした。でもこのおかげで、トーマス・マンの作品を一通り読み通すことができました。博士論文もこれを買っていなければ書けていませんし、博士論文を書いていなければ学習院大学で働くこともなかったはずなので、今の私の仕事の出発点だったと言えるかもしれません。もう書き込みだらけなので、売ってもたいした金額になりませんけれど(笑)。

バイトで貯めたお金で買ったという全集。「それこそ、清水の舞台から飛び降りるつもりで(笑)」

翻訳本と著書

お礼の代わりに挙げたい2冊

本当であればここでお世話になった先生方の本を挙げて、そこからいかに衝撃を受けたかを語りたいところなのですが、多すぎて選びきれなかったので(笑)、代わりにそうした方々のお陰で出版することができた自分の本を挙げさせていただきました。『ドイツ図書館入門』は図書館時代に出版した翻訳本。一生に一冊くらいは本が出せるといいなと夢見ていた無名の図書館員には大きな一冊でした。博士論文を手直しして出版した『トーマス・マンの女性像』も、恩師に尻を叩かれて学習院大学就職の直前に何とか出版にこぎつけたもの。いずれもお世話になった先生方や先輩・友人から学んだことなくしては出版できていないですし、またこれらの本の出版を通してさらなる出会いもありました。いつ眺めても感謝の一言に尽きる本です。

伊藤先生初の翻訳本『ドイツ図書館入門』(右)と、博士論文でもある初著書『トーマス・マンの女性像』

国立国会図書館

研究者として駆け出しの私の強み

モノじゃないですけど(笑)、学習院大学に来るまで働いていた職場です。国立国会図書館は全国のすべての出版物を集める日本唯一の国立図書館。4000万冊もあるんですよ。でもその分、使いこなすにはテクニックも必要。さすがに10年も働いたので、使い方を完全に熟知していて、それが現在の私の強みです。図書館時代は、主に、国会議員に経済分野の情報提供を行う部署にいました。この図書館、論文を書いたりする研究機関のような面もあるんです。すごくおもしろい職場で、こだわりの読書人がたくさん。太刀打ちできない人が山のようにいましたね(笑)。

国会議員の先生方に提出するレポートを書いたり、ドイツ経済について論文を書く部署にもいたそう。

Q. 先生のキャンパスライフは?

息子の成長に目を見張る日々

大学で働き始める2ヵ月前に出産。当時は毎日が全力疾走だったよう。「毎日どんどん言葉を憶えていくのが楽しいですね。」

06:00 起床
子どもに合わせて起きるため、早い時は5:00頃起床することも。
朝ご飯を作り、子どもに食べさせて保育園へ。
09:00 出勤
授業・授業準備・研究活動を行う。
18:00 帰宅
18:30までに晩ごはんを作り家族で夕食。子どもをお風呂に入れる。
22:00 授業準備など
うまく寝かしつけることに成功した場合には、この時間から仕事をする。
子どもと一緒に寝てしまう日も。
24:00 就寝
寝る時間は、日によってバラバラ。3時くらいに起きだして仕事をすることも。
「子どもを産んでから、睡眠不足は続いてますね」
伊藤先生の授業は発言しないと出席扱いにしないものもあり、学生全員の発言時間を確保するのは難しいとのこと。

Q. 1問1答で教えてください。

教授から見た学生のイメージは?

私の学生時代よりはるかにまじめです(笑)! 教員をやっていると「どこまで伝わってるのかな?」というのが常に悩みなんですけど、確実に届いてるなと思う学生がいるとうれしいですね。ドイツ語圏文化学科には、ナチスや原発など重い問題に関心をもつ学生が結構いるので、そういう子たちの学ぶ意欲にちゃんと応えたいなと思います。

職業病はありますか?

「他者のイメージ」を研究しているせいか、「女性らしい」とか言われるとそこに偏見はないのか?と突っ込みたくなります。「日本人のおもてなしはすばらしい」など自画自賛も恥ずかしい。「それ外国の方の前で言えますか?」と思っちゃうんですよね。日本人のノーベル賞受賞を過剰に取り上げるメディアに対しても、どこの国の人が取ってもめでたいのに!と(笑)。

研究分野に関することで、実生活に役立つことは?

文学作品を研究するということは、他者への想像力を育てることだと思うんですよね。たとえば同じ作品でも、私はいつも、ドイツ人、日本人、ユダヤ人、あるいはイスラム教徒が読んだらどうかと考えてしまう。完全にニュートラルな視点をもつのは不可能ですが、そのことを知ったうえで、自分の想像力の限界を超える努力をすることはすごく大事な気がします。

今後の夢・展望はどんなものですか?

高校生のときに、ヒトラーを支持したのはごく普通の一般の国民だったと習ってものすごい衝撃を受けたんです。再びヒトラーが現れたときに私は正しい判断ができるのかな、と。今から見たら子どもっぽい発想ですけれど、これがドイツに興味をもったきっかけのひとつで、今でも根本にはこの疑問があるかもしれない。研究者というと賢い人のようですが、私の場合は少しでも賢くあるために研究者をやっています。国立国会図書館で働いたのも、常に裏取りができる世界に身を置きたかったから。情報の裏には別の情報があり、その裏にはまた別の情報があるんですよね。少しでも多く、自分には見えていなかった見方・考え方を知りたい。その一心で動いているような気がします。

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